こんにちは。KATOです。
「今日の夜家に泊めてほしい」
ある日そんなことを言われたら男性諸君はどう思うだろうか。無論女性にだ。
よっぽど変な臭いがするとかでない限り即快諾するだろうし、それなりの心構えもすることだろう。当然私もそうする。
その日彼女は私の家の近場で用事があり、翌日朝一で帰らなければならないので泊まる場所に困っていた。年は同じ、顔は可愛い。
私は早速彼女が来るまでの間に部屋の掃除をする。一生懸命掃除をする。一生懸命掃除をしている自分のキモさに腹が立ってくる。が、とにかく一心不乱に掃除をする。よこしまな気持ちで。
博士「ケン坊。お前のやっていることは何も間違ってはいない。ただ街のみんなはそんな綺麗さなんて求めてないんじゃ。ほどほどでいいんじゃ。今はワシらの正義が理解されないかもしれん。だがいつか分かってもらえる時がくる。だから耐えるのじゃ。今はほどほどの綺麗さが大切なんじゃ、ケン坊」
ほどほど博士が私をなだめる。
「埃、少し残しとこうかな」
貴重な休日に何をやっているんだ私は。
家を綺麗に掃除し、わざわざ時間に合わせて迎えに行き、オマケに晩飯を作る約束までしてしまった。もはやただのお人好しである。
ちなみに私の手料理は美味しい。
時間を少し押して彼女と落ち合う。
向こうは関西から夜行バスで東京に来て1日用事を済ませた後、私の家で睡眠をとり始発で新幹線に乗りそのまま仕事に出る。かなりのハードスケジュールだ。おそらく次の日のことで頭がいっぱいだろう。ここは手際よく進めたいところである。
夏場なので晩飯はゴーヤチャンプルにした。豆腐はもちろん迎えに行く前に水切りしておいた。我ながら抜け目ない。風呂も借りたいと言っていたのでほどほどに掃除した風呂を貸しつつ、ササっと仕上げたゴーヤチャンプルを出し、美味しそうに食べる彼女の顔を見ながら束の間の時間を楽しんだ。
使った食器を洗ってくれる彼女。なんとも愛おしい気持ちになる。
明日も早いので早々に就寝の支度。
男の一人暮らし。ベッドは一つしかないので不本意ながら一緒に寝ることになる。否、不本意ではない。
電気を消し、お喋りをしながら眠りにつくまでの時間を過ごすのだが、疲れているのか彼女は先に寝てしまう。私はここ最近の生活の乱れですっかり夜型になってしまい、中々寝付けない。夜型だけが原因ではないとは思うが。
意中の女性と一緒に寝るとなれば、どんなに誠実な男性諸君でも一度は肌に触れてみたいと思うのが人情というものである。
ただ、彼女との距離は遠かった。
私に背を向け、なるべく肌が触れないように寝る彼女。少しでも体が当たれば瞬時に姿勢を変えて私をかわす。これは、もしや、
お前なんぞ「アウトオブザ眼中」ということなのだろうか。ならなぜ泊まりに来たんだ?理解が出来ない。。
嫌われたくない。でも触れてみたい。でも触れられない。寝られない。
そんな脳内格闘を繰り広げながら一睡もできずに朝を迎えた。そして気まずい。
私との攻防戦に、おそらく彼女も熟睡はしていないだろうが、よく寝れた風を装って颯爽と始発のプラットホームに消えていった。朝の4時。彼女は振り返らなかった。
彼女との関係は仕事仲間と言ったところだろうか。
現在私は彼女と関わっていたプロジェクトを降りることになっているので、これを最後におそらく彼女に会うことはもうない。
私の淡い恋心は終わったのである。
まぁ私もパートナー選びの価値観が変わってきているので、冷静に考えれば彼女のことは好きにはなれそうにないのだが、このやり場のない気持ちの整理をどうすればいいのか、迷うところである。
ちなみに、帰り際にお礼と言ってタバコを一箱買ってくれた。
ちょうど夜のうちに切らしていたので、家に戻るなりありがたくそのタバコをふかし、ほろ苦い青春を噛み締めながら3時間後の仕事まで放心していた。
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